「さて、計画は最終段階に入ったわけだが。」
 テーブルを囲んで<火鼠>が言う。
「違いますよ。まだ始まったばかりですよ。」
 口を尖らせて<毒蛇>が訂正する。
「何言ってんだ、もう終わりだろ? ナッシュバール暗殺で。」
「それだけだったら皆さんを呼び集めませんよ。」
 ここにいる全員が苦笑する。
そう<毒蛇>は私達を集めてこう言った。
 この国を壊す、と。
そして、彼女<毒蛇>がナッシュバール暗殺を成し遂げたのが一月前。
その間、私達は情報を集めていた。
「それだったら俺達の出番はどこになるんだ?」
「ま、慌てずに。作戦第二段階は<巨猪>さん。貴方はエライオンの護衛に付いて下さい。」
 珍しく<巨猪>の目が見開かれる。
冷静というか感情が無いというか、この男は表情を崩さないのだ。
それが僅かだが動いた。
「<毒蛇>さん、巨猪は前にユインと一戦交わした事があるのですけど。」
 <跳ね馬>が訊ねる。
「ええ、それを利用します。」
「意味分からん。」
 <火鼠>が両手を挙げて、首を振る。
「……説明を。」
 <巨猪>の言葉に、
「えっとですね、前にユインロットと<巨猪>さんが闘ったのは知ってます。」
 一口、水を飲み、
「この状況で前に闘った事のある相手、つまり<巨猪>さんがエライオンの護衛に付いたら彼はどう思うでしょうか?」
「ユインロットは俺達の事を知っているのか?」
「ええ、<白兎>さんとも闘ってますから、何かしらのつながりはあると思ってるでしょう。<巨猪>さんの時は<跳ね馬>さんも見てるわけですし。」
「で、疑心暗鬼に陥るというわけか?」
「さぁ、そこまでは……彼の実態を中々掴めませんから。」
「ふーん、まぁ好きにすればいいさ。俺の出番が来たら教えてくれ。少し暇潰ししてくるわ。」
「分かりました、あまり遠くへは行かないでくださいね。そう時間がかかる事もないですから。」
 <火鼠>が出て行く。
「では、俺も行こう。」
 次いで<巨猪>が出て行く。<跳ね馬>も出て行き、
「私の出番は無いんじゃない?」
 <毒蛇>と二人きりになった。
「<白兎>さんにはしっかり働いてもらいますよ。」
 何をどこまで考え見ているのか。その透き通るような瞳は私を見ている。
「じゃ、出番が無い事を祈るわ。」
 私も部屋を出る。

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